田園風景

私の両親が定年退職を機に長野の田舎に家を建てた。ずっと田舎暮らしに憧れていた父がとうとう行動を起こしたのだった。完成し、引っ越しを済ませたと連絡が来たので、遊びに行かせてもらうことになった。長野ってどんだけ遠いんだよ、と思っていたら、高速を使えば2時間で着くことがわかった。夫の通勤時間と同じと考えれば、通おうと思えば通えなくもない距離である。半自給自足の生活をするために野菜を育てるそうなので、収穫時期に遊びに行けば採れたて新鮮野菜を頂くことだってできるかもしれない(高速代とガソリン代を考えると相当高級野菜になってしまうけれど)。

どれだけ会っていなかったっけ?と思うくらい、両親は何だか変わっていた。雰囲気がイキイキとしていて、心なし肌艶も良くなっているような気がする。いい空気を吸っていると、こんなにも人って変わるものだろうか。

家には暖炉があるので冬の間も薪さえあれば怖くないし、太陽光で殆ど電力をまかなえている。

なんてロハスな生活なんだろう。だけどそんな快適な暮らしの中にも悩み事はあるようで…。特に母は、時々元の生活に戻りたくなるときがあると言い出した。能天気な父とずっと一緒にいることがつらいのか、農作業で腰を痛めるのが苦痛なのか、だけど母の悩みはとても意外なことだった。虫があまりにも多いのだと言う。…そりゃー、田舎は虫だらけなんじゃあないのかい…?私の、何だそんなことか、という気持ちが伝わったのか、母は「だって害虫だらけで、いくら駆除してもしきれないんだもの」とため息をついた。しかも近所の人の話によると、夏になると蝉の声が尋常じゃないので寝不足になる人が多発しているんだそうだ。うーん、確かにそれはつらいかも…。

田舎に住むって、ちょっと憧れていたけれど、いいことばかりじゃないんだなあ、現実はそんなに夢みたいじゃないんだなあ、と思いながら私たちは長野を後にしたのだった。